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『私の自利利他』vol.3 長岡崇徳大学 大学事務局教務・学生課(崇徳厚生事業団Letter令和3年1月号)

『私の自利利他』vol.3 長岡崇徳大学 大学事務局教務・学生課(崇徳厚生事業団Letter令和3年1月号)

長岡崇徳大学大学事務局で勤務する猪浦さん

 

平成31年4月に中越地域初の看護大学として開学した長岡崇徳大学は、地域包括ケアシステムを担う人材育成の拠点となることが期待されている。

 

猪浦拓也(いのうら たくや)さんが長岡崇徳大学の大学事務局職員となったのは、開学を目前に控えた平成31年3月のことだった。

 

「教育関係の仕事に携わりたい。」

「病院看護師として働く妻の姿を間近にみていて、看護師さんたちを尊敬していた。」

 

看護大学が開学されることを知り、職員募集に応募した当時の心境をそう語った。

 

「先生方が思うように授業をしていただきたい」

 

猪浦さんが所属する教務・学生課の仕事は「先生が授業をする環境を整えることと、学生が勉学に励む環境を整えること」。実に端的に表現された言葉であるが、その一言に集約される教務・学生課の役割は広く深い。

 

学生達を指導する教員には、大学に所属する常勤教員もいれば、崇徳厚生事業団グループの病院などに所属する学外の教員もいる。この2年間、猪浦さんが特に尽力してきたのが、常勤教員はもちろん学外の教員も授業をしやすい環境を整えることだった。

授業の環境を整えることの困難さについて、「授業実施を承諾していただいていたとしても、どんな学生達の雰囲気で、どんな場所で、どんな環境でやるのか、不安に思っている先生もいる。その不安は、必要な情報を提供することで出来るだけ取り除いて、先生方が思うように授業をしていただきたい。ただ、こちらも先生がどんな授業をするのか、どんな準備が必要なのか等が最初は全く分からないので、そこの調整はやっぱり難しい。」と話す。

 

開学したばかりの長岡崇徳大学で授業をしたことのある教員は、もちろん一人もいない。しかも、カリキュラムの構成上、学外の教員が担当する授業の多くが2年次までの授業に集中していた。2年間で30人以上もの学外の教員を迎え、環境を整えていくなかでは反省もあったとのこと。「なんとかピークを乗り越えた」と安堵もしている様子だが、今でも悩みながら環境を整えているそうだ。

 

また、新型コロナウイルス感染症は、その“環境を整えること”をより険しいものにした。「医療機関や福祉施設はそれ以上に大変だと思う」と配慮しつつ、大学でのコロナ禍対応については「とても苦労した」と言い切る。

新型コロナウイルス感染拡大により対面授業が出来ない状況下において、学生達の学びを保障するため、長岡崇徳大学はWeb配信による授業実施を決断した。ただでさえ、教員が授業しやすい環境づくりには苦慮しているが、Web配信による授業は、対面授業とはまるで違う。授業日程も短期間で再調整して計画し直すことになった。

当時について、「学内及び学外の先生へ、配信資料の作成などについて時間を惜しまずに説明した。その結果、Web配信での授業へと急遽変更することについて先生方は理解を示してくださり、『わかった』とやっていただいた。先生方のお力があって授業が出来ているということを改めて実感し、とてもありがたかった。」と話してくれた。

 

「現在(取材日:令和2年12月8日)は対面授業が出来ているが、コロナ禍は継続中のことで、いつどうなるか分からない。今後も最大限頑張っていきたい。」

 

まだまだ終わりが見えず、大きな不安が常につきまとう状況ながら、猪浦さんは前を向いている。

 

 

開学と同時に入学した学生達は、来年度3年次となり、今度は病院等での臨地実習が本格化していく。実習指導に関する調整は教員が中心に行うが、事務的な調整が必要であれば猪浦さんたち教務・学生課も関わる。崇徳厚生事業団グループ、そして地域との繋がりのなかで猪浦さんが強く意識するのは、今年度末で閉科する長岡看護福祉専門学校看護学科の存在だ。

 

「忘れてはならないのは、長岡看護福祉専門学校看護学科が地域と信頼関係を築いてきて、我々はそれを引き継がせていただいているということ。学外の先生や実習施設の方たちのご協力があって、何とか専門職養成が出来ている。」

 

 

 

学生と教職員との温かい関係性

 

長岡崇徳大学では、教員が学業のみならず進路や学生生活全般についてきめ細やかに助言するアドバイザー制や、学生が教員へ相談しやすい時間帯を設定するオフィスアワー制を設けるなど、学生サポートを重視している。学生に寄り添ってサポートする姿勢は、教員だけではなく、猪浦さんたち事務職員も変わらない。

長岡崇徳大学の学生達は、事務職員のことを名前で『猪浦さん』のように呼ぶことが多いそうだ。大学の学生と事務職員とが良好な関係性を構築できている現れではないだろうか。

 

入学定員80名の看護単科大学ゆえの特性でもあるのだろうが、現在の関係性が作られる背景には、教職員が一丸となって学生を支える取組や、日ごろからのコミュニケーションがある。

「先輩の学生がいないから」と教職員が主体となって行った開学初年度の歓迎会。初めての徳樹祭(大学祭)やサークルの立ち上げサポートなど、やること全てにおいて前例がないなかで、教職員が新しいことを日々試行錯誤し、知恵を出し合い、協力し合って前向きに取り組む雰囲気が自然と作られていった。

また、学生生活をサポートする上では、学生へ注意をしなければならないときもあるが、猪浦さんは「一方的に否定するような言い方はしない」よう心掛けているという。

「入学してきて何も分からないところから、学業に励める環境づくりをしていくのが教務・学生課の仕事。温かく接して前向きになってもらうようにとコミュニケーションしている。」と話す言葉に、猪浦さんの人柄、そして仕事への向き合う姿勢が垣間見えた。

 

4年という歳月をかけて学生を養成する看護大学の意義の一つには、看護学の関心を深めるとともに、探求し続けるための批判的思考力、創造力および基礎的研究能力などを、時間をかけて養成していくことがあるとのことだ。

 

崇徳厚生事業団グループが全国に先駆けて実践してきた地域包括ケアシステムにおいては、単一の病院や福祉施設でサービスが完結せず、多種多様な事業所や職種間での連携が不可欠となる。このような地域包括ケアシステムを担う人材として、今、高度な専門知識と探求力・思考力を持ち、自律的に判断出来る看護専門職が求められている。

 

「街中で、近くにカフェやお店があるキャンパスも魅力的かもしれないけど、ここならば自然に囲まれた落ち着いた環境で、温かい教職員に見守られて、4年間じっくりと学ぶことが出来ると思う。」

 

愛情ある教職員のもとでじっくりと育てられた学生達が、地域を支える人材として羽ばたく時を心待ちにしたい。

 

<取材後記>
最後までお読みいただき、ありがとうございます。新しい年を迎え、気持ちも新たにLetter1月号を発行いたしました。
今回はほぼ初めましてのメンバーで取材を行いましたが、同世代が集まると賑やかですね。会話が弾み、あっという間の1時間でした。
日頃、事務室の窓口に立つ猪浦さんは、学生さんの相談に本当に親身になって対応されています。こんなことを言うとご本人はプレッシャーに感じられるかもしれませんが、見習いたいなぁと思うこともしばしば。「温かく接して前向きになってもらうように」という言葉を聞いて、その想いが誰に対しても真摯に向き合う姿に表れているのだと感じました。
開学してまだ間もない長岡崇徳大学ですが、その魅力の1つは「アットホームな雰囲気」です。これからも地域をつなぐ看護力を育むため、教職員が愛情を持って学生さんをサポートしてくれることと思います。
末尾になりましたが、ご協力いただいた皆さま本当にありがとうございました。
次号もお楽しみに!
(取材・編集:学校法人悠久崇徳学園 長岡崇徳大学 編集委員、崇徳厚生事業団事務局 石坂 陽之介)

 

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